ボククボのくよくよ日記

ボククボがくよくよしながら日々ちょっとずつ成長していく記録

「どこかで誰かが、痛い痛いと泣いているのかな」 小説感想 “SOSの猿”

ある程度自己紹介とかが終わったので、このブログでやりたかった、「◯◯感想」コーナーをやりたいと思います!

小説とか漫画とか映画とか、自分が観たものについてレビューを書く人ってたくさんいるじゃないですか。あれ、いいなーってずっと前から思ってたんですよね。

自分が「いいな」と思った作品の感想を、自分だけのものにせずに言語化し、どこが面白かったか考察し、共有する。すごい楽しそうだなと思っていたもののめんどくさくて全然したことなかったんですが、やっとできます!

第一弾は、小説“SOSの猿”です。

 

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ぼくは単純なせいなのか、昔から「物語」にすごく影響を受けます。主人公の信念を真似したいと思うし、大切な台詞をずっと覚えていたり、生き方を変えたりします。これまでそういうことがたくさんあったのですが、この小説は、ぼくの人生に二番目に大きな影響を与えたものです。ぼくはこの小説に救われました。

じゃあ一番は?って聞かれそうですが、それはまた今度(笑)
で、このSOSの猿なんですが、なんじゃこりゃ?って感じですよね。すごくいい本なのに、ぼくはこれまでこの小説を読んだ人に出会ったことがありません。伊坂幸太郎って結構有名なのに……。もどかしいです。

 

簡単にあらすじを言うと、「ひきこもりの少年を助けてくれと頼まれた主人公が、嫌々ながら奮闘する話」という感じでしょうか。

ざっくりしすぎてますが、あらすじなんてどうでもいいんです。大事なことは、これは人を救う小説であるということです。「困っている人を助けたいという気持ち」がこの物語のテーマなのです。

 

小説が始まってすぐ、救急車のサイレンの音が聞こえ、主人公はふと、人にこんなことを言います。

 

「どこかで誰かが、痛い痛い、って泣いているのかなって、そう思うんです」

 

この一言がこの小説の全てを表しています。そう、この小説は、「『どこかの誰かが困っている』という事に悩む人々の物語」なのです。

この主人公は、誰かが困っているのを見たり聞いたりすると「自分には何もできない」と、壮絶な無力感に襲われる、感受性の豊かな男なのです。彼はこんなことも言います。

 

あちこちで人々が痛い痛いと泣いている。私たちの魂を助けて、とSOSを発している。その声や音が私の耳にわっと飛び込んでくる。が、何もできない。SOSに応える力など私にはない。見て見ぬふり、聞こえないふりをするだけだ。そのことがいつだって辛い。どうすればいいのか。

 

また、この小説に出てくる、「眞人君」という少年も似た様な悩みを持っています。彼がなぜ引きこもったか、その理由は途中まで分からないのですが、物語が進むにつれ、どうやら母子監禁事件の被害者を目撃したことがきっかけだったのではないかということが判明します。

眞人君はひきこもる直前、ストリートミュージシャンにこんなことを言ったことがありました。

 

「あなたたちは何の為に歌っているんですか。歌っていうのは自己満足ではないんですか?人を救うんですか?

 

眞人君は、あざだらけの母子監禁事件の被害者に想いを馳せ、しかし自分ではどうすることもできず、世の中にそんな不幸なことがあるということに耐えられず、ひきこもってしまったのです。

 

ぼくは高校を卒業する直前にこの小説を読んでいて、主人公の気持ちも眞人君の気持ちも痛いほどよく分かりました。なぜなら、当時のぼくがまさにそのことで悩んでいたからです。

その時、自分の病気が悪くなったことがきっかけで、ぼくは自分の人生や世の中についてこれまでにないほど深く考えていました。そしてこの2人のように、世の中に不幸な人がいるという現実に打ちのめされ、荒れ、くよくよしていたのです。その時にたまたま読んだのがこの本でした。

「主人公と眞人君はぼくだ」そう思い、夢中でページをめくりました。
この2人は物語の中でくよくよしながら色々なことを考えます。そのひとつひとつにぼくは深く共感し、読み進め、そしてラスト、主人公はある人にこんなことを言われます。

 

「くよくよしていていいんですよ」

 

この一言で、主人公は全身に感じていた重苦しさから解き放たれ、救われるのです。

ぼくはこのシーンを読んだ時、涙が出ました。主人公と同じように、ぼくもこの一言で救われたからです。

「くよくよしていていいんだな」と思えたぼくは、それまで4ヶ月間続いていた苦しみから救われ、前を向くことができました。

 

小説に救われるなんて初めての経験でした。
以来、ぼくは伊坂幸太郎のファンだし、「くよくよする」ということを大事にしています。そう、このブログのタイトルを「くよくよ日記」としたのはそういう理由です。

まぁ最近は、誰かの不幸にくよくよしているということはほとんどなく、単に自分の不甲斐なさにくよくよしているんですが笑
でもまぁ、どちらの意味でも、「それでいいかな」って思っています。

伊坂幸太郎の小説にはこの様なテーマがいつも通底していて、これまで7冊くらい読みましたが、ほとんどどの作品にも強い影響を受けています。ぼくが1番尊敬する作家さんです。

これからもいくつか、伊坂幸太郎作品を紹介していきたいと思います。

今回の作品も、もしこの記事を読んで興味を持ってくれたのなら、読んでみてくれるとすごく嬉しいです。